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セコリ東京スクール（第一期）が終わって
仕事のやりくりをしてミラノへ飛んだのは昨年の６月２９日だった。３年前、セコリがどんなものかを知る為にセコリ那須セミナーに参加した。
その後、仕事に追われ勉強した資料を見る事もないまま、９月から始まるセコリ東京校の講師ライセンスをとるために１ヶ月の短期留学となった。幸い１年先輩の関西校から３人の美女（昔の？）が一緒だったので心強かった。レジデンスからトラムとバスを乗り継いで登校、冷房設備のない教室でウチワ片手の授業が続いた。与えられたのは定規だけ、カーブルーラは使えない。カーブは全て鉛チャコによるフリーハンドで描く、それは無限の線でありアルテ(芸術)である。テキストはあるが図面は載っていない。先生が説明しながら書き描いたのを真似する。かつて稲葉洋服裁断研究所に通っていた３０数年前がよみがえってきた。あの時も冷房設備もない寺子屋でひたすら先生の真似をしていた。無心にやった事が腕にインプットされている。鉛チャコを持つと手が自在に動く。翻って考えてみるに、今の学校の教え方は親切すぎると思う。図面を渡すと覚えた気になって勉強しない。図面を引かせると各種ゲージを使ってそれなりに書くものの綺麗な線だが力強さがなく個性が出ていない。
企業にいた頃、新入社員教育において直線・平行線・直角の引き方を太い芯で折れる事を気にしないで力強く正確に引くことを繰り返させた。ハサミ使いとしては練習した線に対しハサミを大きく使って切る訓練をさせた。直線が終わると曲線の描き方と切り方を練習させた。針使いでは針と指貫の使い方を中心にまつり縫いや釦付けを練習させた。ミシンも直線・曲線縫い、縫い始め・縫い終わりの訓練をさせた。何事もその人のセンスが出るだけに訓練すればするほど磨きがかかる。それに、縫製経験が多いほど線の意味合いが分かりそれぞれの線に反映されてくる。我々の修行時代は４～５年縫製してから裁断を習いに行った。今は、縫製の真似事をしただけでパターンばかりいじっているが、所詮紙の上だけである。トワールでの確認にしても限界がある。縫ってどうなるかの想像力もつかないまま自分なりの悪いクセが付いてしまう事が多いのではないだろうか。体験したミラノ方式はまさにアナログの大切さを呼び戻してくれた。セコリ東京スクールではこのミラノ方式で進めた。曲線は全て鉛チャコを使いハサミで切る。「スクールでは訓練としてやってくれ」と（会社に戻っては自由で結構だが）。最初は戸惑っていたが、段々いい線を描くようになっていった。ある人は鉛チャコの線がすばらしく上達した。まさしく感性に磨きがかかった証である。アイロン使いでも上達した人がいた。縫製テストの課題で縫ったジケットのチェックをしているとほとんどシルエットが出ていない。「私が半身アイロンをかけて見よう」と言ってやって見せる。その結果シルエットの違いを見てなるほどと言う人が大半の中に「私がやるので見て下さい」と言う人がいた。そして自分がアイロンしたのを見せに来る。「まだ、ここが違う」と言うと、また自分でやって見せに来る。何回か後、「ほぼいいだろう」と言うとにっこりした。それは一つの技がその人の腕にインプットされた瞬間と言えよう。技術の基本は繰り返し練習して「目」と「手」と「心」に刻む事である。セコリ東京スクールはそんな思いを語りながらの『バーゼ（原型）』６ヶ月を修了した。アナログを知ってからデジタルを知る技術者が後に続く事を願いつつ。
Ｎ・Ｓ
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